編集長 伊集院光の一言 このテーマを送ってくれた方にして見れば、「セーラー服」と来て、ちょっとは甘酸っぱい青春の思い出やら、エッチな妄想やらの話が展開されるのでは、と期待されているのではと想像しますが、その期待にまったく添わない話を思い出しましたので、書きます。 34歳、男子、妻あり、おまけに体重135kgの私は、世間に数人いるやも知れないこのようなプロフィールを持つ方のなかで、きわめて珍しく、3年に1度くらいの割合でセーラー服に袖を通す機会があります。しかも仕事で。水兵でもないのに。 というのも私の仕事はタレントであり、テレビ番組の中で女子高校生役を受け賜る事があるからです(といってもテレビドラマ「白線流し」の続編で酒井美紀の役どころを振られることはありません)。 初めてバラエティ番組のコントで女子高生をやることになったときのこと。私の楽屋にはセーラー服がつるされていました。紺の襟、えんじのスカーフ、白いシャツ、濃紺のスカート、白いハイソックス、そしてお下げのカツラと黒の革靴。 このどれもこれも、身長180cm、B−W−Hすべて135cm、足の大きさ31cmという私のサイズのものが揃っていたのです。しかも驚いたことにこれらは全てテレビ局の衣装部付けのもので、この日のために私のために特別にあつらえたものではない、つまりテレビ局の衣装倉庫に全て保管されていたものだというのです。 そしてその証拠は意外なところから発覚しました。本番前全ての衣装を着てメイクを済ませ、大鏡の前で役作りとばかりにスカートのすそを摘み上げて軽く会釈などしていたところ(馬鹿か俺は!?)胸のあたりに何か違和感がある。 「あら嫌だ、第二次成長かしら?(馬鹿だ俺は!)」第二次成長でも乳がんでも恋でもないその胸の違和感はなにやら制服の胸ポケットのところに紙が入っていたからでした。取り出してみると、そのまま一二度クリーニングされたと思われるくしゃくしゃの紙切れが一枚、広げてみるとそれは台本の切れ端で、そこには 「ストロング金剛『先輩キスしてください。』」 との文字がはっきりと読み取れました。 めったに使われることが無い、私サイズの巨大なセーラー服を前回使用したのがストロング金剛さんだったとは、、、あの元プロレスラーの、スキンヘッドにそり落とした眉毛、2m近い豪傑のストロング金剛さんだったとは、、、しかもその時ストロング金剛さんに与えられていたせりふが「先輩キスしてください。」だったとは、、、どんな番組のどんなコントだったのだろう?先輩役は誰だったのだろう?キスはしたんだろうか?ストロング金剛子の恋の行方は?ポケットから謎が溢れ出した。 その日僕はストロング金剛子先輩に恥じぬように一生懸命女子高生をした。そして衣装の胸ポケットにその日の台本「伊集院『先生男子が私をいやらしい目で見るんですぅ』を忍ばせた。どうか衣装部の人に発見されぬまま後輩の手に渡ってほしいものだ。 (以上、全文1,209文字÷テーマ「セーラー服」5文字、241倍返しでお送りしました。) バックナンバーへ募集中! 7文字で50倍返し! 戻る